少子高齢・人口減少社会の到来を見据え、次世代社会を担う子どもたちが健やかに成長できる環境を整えるとともに、安心して子育てができる環境づくりを進めていくことが急務となっています。また、急速に進展するICT、AI重視の社会においては、様々なコミュニケーションの形態と可能性が生まれる一方で、人と人の直接的な対話によるつながりの希薄化も危惧されていて、人間の社会性の育ちへの懸念も表明されています。さらに解が一通りではなかったりまだ解の見つかっていない課題が増大することも予想されていて、それらに創造的に解をつくりだし解決していく力を育成することは私たちの焦眉の課題となっています。
国立市はこれまでインクルージョンをキーワードにするまちづくりを進めてきましたが、少子化の進行や家族形態の多様化、地域のつながりの希薄化等は全国と同じように進行しています。これら家族をとりまく環境の変化による世帯の孤立化、格差社会の進行や子どもの貧困の問題など、子どもや子育てをめぐる課題は複雑多様化してきて、ときには深刻化しています。行政のみならず、地域ぐるみで良好な親子関係の形成を支えていく必要性は、今後ますます高まりをみせていくものと思われます。
こうした課題を乗り越えていくためには、多世代・多様な主体がかかわるような地域社会の活性化とそれと連動した子ども育成活動を充実させるとともに、乳幼児からの教育すなわち保育・幼児教育を充実させその質を高めることが肝要です。そうしてこそ貧困の連鎖を断ち切り、安心して子どもを産み育てることのできる環境を創ることができるからです。
今世界中で、乳幼児期からの丁寧な関わりによる育ての保障が重視されるようになってきています。幼い頃からの大人との愛着・信頼関係の構築、子どもたちの、自己肯定感の丁寧な育て、そして最後までやり抜こうとする力、他者と対話する力、自分の気持ちを表現しコントロールする力などの「非認知スキル」の育てを乳幼児期から丹念に保障する必要性が急速に高まってきているのです。
私たちは、こうした状況に前向きにそして積極的に対応していきたいと考えています。そのため、この地に新たに「社会福祉事業団」を設立することにいたします。本事業団は、全国に先駆けて国立市が推し進めるソーシャル・インクルージョンのまちづくりの理念の下、その一環として、保育・幼児教育環境を積極的に向上させるべく、必要な調査・研究・実践を熱意をもって行います。そして、子ども一人ひとりが夢と希望を叶え、未来に向かって光り輝き、自立した生活を営むことができるようになることをめざして、次世代育成のまちづくりに貢献し、「子どもの最善の利益」が実現される社会を目指してまいります。
2019(令和元)年9月2日